グレン・グールドのゴルドベルク変奏曲は55年と81年の二種類のスタジオ録音が有名だが、そのほかにも54年と59年の録音が存在しているようである。
そのなかでもこの59年盤はまだグールドがコンサート活動をしていた時期のザルツブルグでのライヴ。

緻密なテンションと知性が凝縮された有名な二種類のスタジオ盤の影に隠れているような録音だが、この59年盤はライヴ録音だからであろうか、呼吸や間(ま)のとり方がずっと自由で軽やかで、今その瞬間に生まれる音が解放されていくようで聴いていて心地よい。それでいてライヴという一回性から生じる緊張感も決して切れることはない。
もしかしたらグールドが残した数種類のゴルドベルク変奏曲のなかでも一番好きかもしれない。
もちろん個人的に、ということだけど。

Live in Salzburg & Moscow

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