うしろに

この半月ほど、意味も無くほぼ毎日走っていた。
トラック一周550メートルの運動場で、約一時間、多いときは14周ぐらい走った。単純計算でも約7キロ。まあ、別に大した距離じゃない。ただの数字だ。

別に大会に出るとか、そういう予定も無いし、誰が褒めてくれるわけでもない。誰も感心してはくれない。


自分でも「最近すごく走るけど何でかな?」思ってしまうが、答えは自分ではなんとなくわかっている。


でも、言葉にすると嘘になってしまう気がするので(だが、それこそ本当のことになるということかもしれない)自分でもそれを言語化しないように気をつけているのだが、油断するとそのスットボケ野郎は僕の背後に立っている。
そしてそいつは火を点けたばかりのマルボロ・ライトを地面に落とし、僕の方を見ずにこう言う。「なるほど、そうやって君は自分に言い聞かせているわけだね。でも考えてみなよ。誰だろうと、走りつづければそりゃぁいつかは足がもつれて、いつかは止まってしまう。でも走ってればまだいいほうだ。走ることもなくもつれちまうやつだっている。でもいいかい?それもこれもすべて君が望んだことなんだよ。」

でも、ほかに何ができたというんだ?