本に飢えた妻が昨日買った本。
まず川上弘美のセレクションというだけでも買いなのだが、坂口安吾の「桜の森の満開の下」、車谷長吉の「武蔵丸」、よしもとばななの「とかげ」など、今ふたたび読み返してもやっぱり良いなと思える作品が入っている。
確かに、「桜の森の満開の下」の冒頭にしても、読み返してみるとなんとなく川上弘美的な世界のように思えてくるし、「武蔵丸」も兜虫という人間ではない生き物との関係をめぐる物語がカワカミヒロミ的なものに見えてくる。

西瓜はどこにもなく、またメロンはどこの店でも三千五百円、五千円という値段で、嫁はんに言わせれば「兜虫に食べさせるには、ちょっと……。」と思うて、田端銀座の八百屋で夕張メロンを買うて来た。これなら、一個五百円である。中身が橙色なのである。私がそれを試食して見ると、まずかった。「こんなメロンは武蔵丸ちゃんには食わせられへんで。」と叫んで、財布から一萬円を出し、これで然るべきメロンを買うて来てくれと言うた。
                   車谷長吉武蔵丸」/『感じて。息づかいを。』所収より

感じて。息づかいを。 (光文社文庫)

感じて。息づかいを。 (光文社文庫)

そういえばお正月に宮崎のブックオフ小泉今日子よしもとばななの「とかげ」を朗読するCDが、たしか270円ぐらいで売られているを見つけて買った。これが意外に良くて泣きそうになった。

とかげを読む

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