音楽

きのうはそんなこんなで無事生き残った自分にプレゼント、というわけでもないが、
以前から気になっていたシゲティのバッハ無伴奏をついにゲット。

バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ

バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ

録音年代(1955〜1956。ただし1957、1959諸説あり)の割には音も良くて、何よりも演奏が好きだ。
きらめく様な音色とか、華やかさとかそういうものはない。もしかしたら、テクニックも今活躍している若手のほうが上かもしれない。古楽器的な軽やかさともちがう。そう考えると、どちらかというと地味な部類に入るかもしれない。でも一音一音が研ぎ澄まされ、1フレーズ1フレーズが説得力を持って聴き手に語りかけてくるような真摯さに胸を打たれる。

そういえば、吉田秀和は自分が音楽について考えるようになったのはシゲティがきっかけだと本のなかで述べていた。

そうしてすぐれた再現芸術家の場合、彼らに与えられた楽譜は、解いても解いても、つぎつぎと生まれる謎に満ちている。その謎の発見と解決の隠れん坊のなかに、彼らの精神の高貴さが示現される。シゲティのような芸術家の場合は、まさにそれである。その結果、彼の演奏は、高い知性と作曲家に対する明確な責任の意識、それから非妥協的で頑強な意志と、技術的肉体的な困難との衝突の場所になり、そこから厳粛な、非常に緊張度の高い、鋭い演奏が生まれる。それは極度に《美的》で倫理的な行為である。

吉田秀和全集 第4巻 P.31