テレビ(ビデオ)

先週の金曜日の深夜にNHK衛星第2であっていて、ビデオ録画していたグレン・グールドのドキュメンタリーをやっと見た。
内容は、「グレン・グールドソ連の旅」みたいな感じで、1957年のソ連ツアーの様子を当時の聴衆や関係者の証言から浮かび上がらせようとするもの。アシュケナージや、ロストロポーヴィッチもインタビューに答えていた。

グールドは、とにかくみんなに「火星人」あるいは「宇宙人」のようだったと言われていた。或る人は「絶対に宇宙人だと確信している。人間にあんな演奏ができわけがない」とまで言っていた。

バッハや、シェーンベルクベルグ、クシェネクらの曲をレクチャーを交えながら演奏したということは以前にも伝記などを読んで事実としては知っていたが、当時、ソ連当局が禁止していたこうした音楽家の曲をとりあげたことは、当時のソ連の人たちにとってはものすごいショックなことだったらしい。
とにかく、この世界には自分たちの知らない音楽がまだあるのだということに驚いた、とある人がインタビューに答えていたが、この気持ちは昔のソ連だろうが、今の時代だろうが、変わらない種類のもののようにも思えた。すなわち、日常的な経験や常識がその組成を組み替えられ、自分にとって未知の世界が開かれようとしているときに発する驚きのかたちだ。

このソ連ツアーの録音を持っていたのを思い出して、思わず聴きなおしてしまう。

Live in Salzburg & Moscow

Live in Salzburg & Moscow

ツアー初日に弾いたバッハのフーガの技法や、新ウィーン学派についてのレクチャー・コンサートのCDもあるらしいが、まだ聴いたことが無いし、実物をみたこともない。

そういえば、番組の中で数秒だが、リヒテルの演奏を映像で見ることができた。「早回しか?!」というぐらい早い動きと、豪快なピアノアクションに息をのんだ。

音楽に接するときって、どうしてもCDやカセット・テープなど、聴覚情報にだけ頼ってしまうけど、どういう演奏をしているのかを映像でみると、CDの聴き方も変わる気がする。その人がどういう身体で、どういう動きで、音をだしているかを知ることが、聴覚情報としての録音媒体に思わぬ奥行きを与えてくれるような気がするのだ。