シロッピー

ふたたび、書類を揃えたり用事を片付けたりするために、僕ひとり北の国へ帰ってきた。
手続きの関係で、下手すると来週の月曜日までかかる。ぼっちゃんが生まれてはじめてのクリスマス、はなればなれ。

昨日のうちに帰ってきてよかった。外は午前中から降りだした雪ですっかり雪景色。


昨日の夜、ついに、僕や、僕らの友人たちを困らせている先輩と決着をつける。

10歳ぐらい歳上の、しかもコミュニケーション能力の低い、しかもそういう人に限って威圧的だったりするのだが、とにかくその人に言うのは、もう今しかないと思った。

このことについて、僕一人が矢面に立つとどういう仕返しをされるかわからないし、そもそも言ってどうなる相手でもないんじゃないかと、僕が電話することを危惧する人もいた。

心配してくれるのは嬉しいけど、でも、一度言ってやらないと気がすまなくなっていた。

電話して単刀直入、「もうみんなあなたから心が離れています。役員を辞めてください」と言った。

単刀直入過ぎて最初は相手もあっけにとられていたが、結局、辞めてもらうことに同意してもらった。

どうしてこんなことになってしまったのかわからない、と相手は言った。
そもそも、そういう鈍感さが、一番ダメなところなんだ。それこそが問題を大きくしたのだ。

・・・とはあえて言わなかったが、とりあえず、相手の言い分を言うだけ言わせて、本心では納得してないかもしれないが、辞任の手続きを進めることに納得してもらう。



案外、あっけなくてちょっと鬱になった。
一体、僕は何をしているんだろう。


個人的には、もっと反発があると思っていたので、それに対する反論や言い返しもいくつかシュミレートしていた。しかし、すべて無用だった。



僕の脳内シュミレーションでは、

ホッチキス:「単刀直入に言います。もうみんなあなたから心が離れています。役員を辞めてください」

相手:「ハァ?お前、誰に対してモノ言ってんだ?寝ボケやがってこのウスラボケナス野郎!どうしてお前なんかにそんなこと言われなくちゃならねえんだよ。そんな筋合いねぇだろ・・・。謝れ。今ならまだ許してやる。とっとと謝れ!」

ホッチキス:「こういうこと言う筋合いがないのは分っています。筋合いがないからお願いしてるんです。役員を辞めてください。」

相手:「フン・・・。いい度胸してるじゃねぇか。じゃぁ、オレが辞めないっていったらどうするんだ?えっ?」

ホッチキス:「お願いです、辞任してください」

相手:「お前、自分が何言ってるのかわかってんのか?このトボケハナクソ野郎!」

ホッチキス:「自分が間違ったこと言ってるとは思いません!これは他の役員やみんなの総意です!あなたに対して不信任決議を出すという意見まで出ています。もしそうなれば、あなたは石もて追われるような形で辞めなければなりません。今ならまだ間に合います。まだあなたは辞めさせられるのではなく、自分で辞めることができます。いいですか?もうあなたはデッド・ラインの上にいるんです。お願いです。辞任してください。」

相手:「な、何、ふ、不信任・・・?グッ・・ゴクッ・・・(唾を飲みこむ音。明らかに動揺している)。ふ、ふざけるなっ!や、辞めんと言ったら辞めんっ!ガチャッ(電話を切る音)ツーツーツー・・・」



そして数日後、不信任とはいかないまでも、連名で辞任の請願書を作成。しかし、誰が持っていくかが問題になる。

友人A:「誰がもって行くんだよ・・・別にオレが持っていてもいいんだけど・・・」
友人B:「やっぱ、ちょっと持って行きづらいよね・・・あっ!ホッチキス!」

(友人の背後からバッと請願書をもぎ取って、ズンズンそのまま相手のところに歩いていく。)

ホッチキス:「先輩、ちょっといいですか」

相手:「あ〜ん?何か用か?このヘタレトウフ野郎!」

ホッチキス:「できれば2人きりでお願いします」

相手:「フンッ!クソガキが調子に乗りやがって・・・」

(移動)

ホッチキス:「(請願書を顔に突きつける)あなたの辞任を求める請願書です。みんなの連名です。もう自分でも分ってるでしょう?もうあなたはおしまいなんですよ。」

相手:「・・・・・。」

ホッチキス:「いいですか、ほんとうにこれが最後のチャンスです。もう今を逃したらあなたは自分で辞めることもできないんですよ。今なら、辞めさせられたのではなくて、自分から辞めたという形で、あなたの面目を守ることもできます。お願いです。辞任してください。」

相手:「・・・・・。」

ホッチキス:「辞めていただけますね。」

相手:「わかったよっ!辞めればいいいんだろ、辞めればっ!この青二才がっ!」



書いていてだんだん「相手」が(安岡)力也、あるいは『金融腐食列島』の仲代達矢になってきた。
ちなみにホッチキスのところは『クライマーズ・ハイ』の佐藤浩市のイメージででお願いします。