足から血

8月11日が締め切りの論文を朝方、完成させる。キーボードから手を離したころには、だんだんと外が白く明けて来てヒグラシが鳴きだしていた。
しめきりまであと何日かあるので、一晩寝かせて、指導教官の先生や他の人に読んでもらったり、誤字脱字をチェックするつもり。


書いている途中、麦茶でも飲もうと台所に向かうとき、食器棚の角に左足に小指と薬指をぶつける。
妻とぼっちゃんは寝ていたので、一人で夜更けに声を殺して(騒ぐとぼっちゃんが起きるので)畳の上を転げ回る。
爪がはげるとかそういうことはなかったが、何処かしら切ったらしく、足の薬指から血がドバドバ出ていた。

夜更けに麦茶でも飲んで一息つけよういう気を起こしただけで、どうしてこんな目にあわなければならないのだろうと、傷口から流れる血をティッシュでふきながらすこし呆然とする。

でも、もしかしたら、もっと大変な事故が起きる前の厄払いなのかもしれない、ひょっとすると毎日ぼっちゃんと散歩がてら神社にお参りしたおかげだろうかなどとふと考える。


6時ごろフトンに入り、2時間ほど寝る。


そして9時過ぎ、館長のうちへ向かう。この時期は毎年お中元をもって挨拶にいくのだ。
いままでは僕と妻の2人で行って、館長自慢の真空管アンプと最新型CDプレイヤーで僕が持っていったCDを聴かせてもらって、その音の良さに驚くなんてことをしていたのだが、ぼっちゃんがうちに来てから、なんだか孫を見せに行くような感じで、不思議だ。

いつも昼食をご馳走になるのだが、館長の車で不知火町を通って天草へ。
ウ、ウニ丼と刺身盛りとガネ(渡りガニ)のボイルをご馳走になりました・・・。
壱岐のウニに天草のウニ・・・。今年はいったいどうなっているのだろう。

結局、一日館長と遊んでしまった。でも、論文を書き終えた後だから心配事がなくていい。


帰りに壊れたアンプ(館長から以前頂いたもの)を、館長が教えてくれたオーディオ専門店に持っていって見せる。
お店の人は一見、うるさそうな人だったけど、話してみるといい人だった。
でも、アンプの方は物自体が25年前のもので、メーカーにも部品がないかもしれないということ、部品を探して直るかもしれないが修理費が高額になること、そしてもし治ったとしても、物が古いのでこれからまた不都合が出てくる可能性が高いらしい。

いっそ買い換えたほうがいいのでは?と、真空管アンプを薦められる。音を出してもらったが、たしかにすごい。音の次元が違う。違いすぎる。

でも、と思った。これだけ違いすぎると、なんだかキリがないな、と。
はっきりいって、今の僕に10万円のアンプや総額60万のステレオセットは身分不相応だし、それに、結局は再生装置でしかない。
それだけお金を出すなら実演を聴きにいったほうがいい気がした。

もちろん、オーディオ屋さんのおじさんの考え方も、そのおじさんの薦めてくれた機会の音の良さも、すばらしい。それは認める。決して、あの世界のすばらしさを否定するつもりはない。

でも、今の僕が足を踏み入れるべき世界ではない、そう思った。



http://www.hmv.co.jp/product/detail.asp?sku=1073779
館長から借りたオイストラフの10枚組みセット。
店頭でもちょっと狙っていたので、さっそく6枚目に入っているチャイコフスキーのコンチェルトや7枚目のシベリウスのコンチェルトを聴く。骨太で強靭な音色。まさにオイストラフ


夕飯は餃子の王将の餃子定食。最初から餃子が二人前ついてきて、ご飯は無料で大盛り可という男らしいメニュー。まさに定食界のオイストラフ。気に入った。でも、さすがに最後の二つぐらいで苦しくなった。