唇の端が裂けて痛い。寒い季節が近くなるといつもこうだ。
冬が近づいているんのだ。

今日は妻も休みだったので、もうすぐぼっちゃんが通うことになる保育園へ見学に行くことにした。
途中、ヤギがいた。
「なんだ、赤い車か・・・」とボソボソつぶやくような、眠そうな目でこちらを見ていた。

ほんとうは家から歩いて10分ぐらいのところに保育園があるのだが、そちらは町中の保育園ということでほぼ定員がいっぱいで、いわば郊外の、すなわち山の中の保育園にぼっちゃんは行くことになった。

ちょうど行ったときが外遊びの時間で、20人ばかりの園児達がかなりテンションが高かった。そのうちのひとりに何かの幼虫を見せてもらった。
保育園のひとに、「ああ!メガネをかけたお父さんといつも散歩している子でしょう!」と言われた。意外と見られているものなのだなと思った。

ぼっちゃんはここですでにちょっと押され気味だったが、教室に移ってリズム体操や朝の歌を歌う段になるとかなり固まっていた。そのうち泣きそうになってきた。

そういえば保育園のひとがさっそく砂場に(「最初は砂とか食べちゃうかも〜」なんて言いながら)ぼっちゃんを連れて行って遊ばせてくれたとき、ほんとうに数秒だったけどぼっちゃんが立った。
本人も「あれ?えっ???」という感じでカチンと固まっていた。

なんだか・・・一年前はまだ生まれてもいなかったのに・・・・。


ホッチキス保育園も耐震構造に難アリというわけではないのだが、特にこの頃かなりガタがきているようだ。右肩の痛みは慢性的になってきているし、かなり精神的にも追い込まれることが多い。いきなりでっかいニキビ(大人だから吹き出物)が出来たり、髪の毛もやたらと抜ける。

きのう或る人に「男で子育てなんて良いご身分だね。仕事しなくて良いし」みたいなことアッサリ言われて、あまりにもその定型的な言い方に腹も立てる気も無いが、まぁ、どうせみんな思っていることだろう。

たぶんその人も年齢(70歳ぐらい)からしてたぶん自分の子どものオムツも替えたこと無いような世代の人なのだろうが、そこまでアタマが幼稚だと逆にうらやましい。


そんなことを考えながら夕方になってお風呂に行くと、久しぶりにおもいがけず知人と遭遇。
その人とすこし話をしたあと、ちょっと覚悟ができた。

ホッチキス保育園ものこりわずか。もうここまできたら学会の準備もぼっちゃんの世話も、やりきるしかない。

確かに時間は無いけれど、極端な話、24時間のうち23時間ぼっちゃんに使うことになっても、絶対残りの1時間を準備に使う。

昼間、ぼっちゃんが寝た隙にギリギリやろうとすると、寝かせつけようとしてイライラしてしまい、いざ寝付いてもイライラが残ったまま「今この資料を読むのは正解なのだろうか、むしろ読む暇があったら書かなければならないのではないだろうか」とイライラしたり、書いたら書いたで「こんなこと書いて何になるんだ」とまたイライラしたり、思えばあまり効率がよくなかった。

正直、学会の発表を辞退しようか、とか、一時保育にもう預けようかとか考えた。しかし、おそらく、今このときは、僕に与えられた試練ではないかと思う。
もし、ここで逃げたら、きっと一生僕は負け犬だと思う。
ぼっちゃんに顔向けできない。