「どうじょ〜」(どうぞ〜)とか「・・・った」(ありがとうございました)という言葉が徐々に増えつつある一方で、保育園の連絡帳に「こんなに食べさせて本当にいいのだろうか!」と書かれるほどの大食漢に育ったぼっちゃんの足が最近素晴らしく臭いのは彼の愛用する長靴がその一因であることにほぼ間違いないのだが、もはや芳香と呼びたくなるその香りは強いて言うならスイスはアルザス地方のヤギの乳から作ったチーズを特に念入りに熟成させたもので赤ワインとの相性は抜群だと言えばいくらか想像しやすいかも知れぬ。もはや保育園でもその臭いはお墨付きでありそれはそれでいいのだがやはり足が臭いのは女の子に嫌われるであろうと妻が先日無印良品で赤いメッシュのベビー靴を購入。するとあろうことかぼっちゃんの足が臭くない。もしかしたら外で遊ぶことがその日はたまたま少なかったからかもしれないが、とにかく臭くない。その臭いはせいぜい国産チーズ良く言ったところで小岩井の6個入りカットチーズと言ったところか。それはそれで寂しいものがある。
気が付いたら1週間以上放置してた。でもなんとか論文を書き上げて昨日速達便で郵送。たぶん今日の午前中には着く。もしかしたらもう着いてるかもしれない。んなこたぁないかと思いながらもきのう郵便局で「これ速達で」と言った瞬間を思い出すとやっぱり妙な脳内麻薬が出たりするのであって、それにしても去年発表用に書いたものに手を加えていたら結局原稿用紙20枚弱ほど分量が増えてしまったって規定枚数ギリギリだった。序論なんかもうほとんだ書き換えたというかそっくり入れ替えだし、結論もだいぶ変わってしまって「これとそれは深いところでは峻別が無効化するけどやっぱり別のものなんだ。でもそれがどうしてどこのあたりで別のものなのになるのかはやっぱわかんねー」という落ち着きのないところに強引に腰を下ろしたけど何となく予想していたとおり空気イスで足がプルプルだ。最後の数日間、先月の半ばに一度指導教官の先生に見てもらって文章が稚拙だとか幼稚だとか言われたところをガシュガシュ研ぎ澄ませていき、自分でも何度か読み直さないとわからないほどになっていく過程はなかなかスリリングであった。一度ブヨブフクフクと膨らんだものをゴシュゴシュ絞り込んでいく感じというのであろうか。もちろん、自分でも何度か読み直さないとわからない文章は他人にはもっとわからないので、もちろんまた書き直し。
先生に言われて気づいたけど、やっぱりちょっと守りに入ってたぜホッチキスカンガルー。文章がまわりくどくて稚拙な印象を与えるのって城に例えれば攻撃に備えて引用や参考文献という名の堀を何重にも掘って、「しかし」「あるいは」「すなわち」という方向指示看板が無数に立てれられた長大な迷路をその内側に張り巡らして、更に幾重もの門を開かないと本丸にたどり着けないというカフカ的と言えば言えるようなカッコいい世界だけど如何せんカンガルーの脳ミソだと単に頭が悪いだけの似非カフカ的世界なだけの話で却って始末が悪い。

書いた日記はあまり読み返さないし五月病っぽくって先月は気持ちの余裕もなかったしでずいぶん書いてなかったから何を書いて何を書かなかったのかもう分からないのだが、庭のばらがグングン成長している。いたるところから未だほの赤い新芽が出てきてはどんどん葉を広げていく。ばら屋のおばちゃんに「まだこの苗は赤ちゃん苗だから、花の蕾が開きそうになったら切って、花が咲くための栄養分を葉や茎に回して、とにかく葉や蔓を伸ばすように」と言われたが、それが赤ちゃん苗だからか、それとの今の季節がそういう季節だからかは、ちょっと忘れたがそれはともかくワサワサと茂っていく。
切った蕾は一輪挿しにでも差して部屋の中で楽しむとバラのおばさんが言っていたので蕾を水に漬けていたら数日の間に花が開いた。少女漫画に出てくるような豪華で瀟洒で花びらが幾重にもなったバラとは違って一重のオールドローズぽいものだが、香りもよくて楚々とした佇まいが良い。品種名はジャクリーヌ・デュ・プレ。イギリス出身で若くして世を去った天才女流チェリストの名を冠するバラなのである。