(つづき)

11月10日(土)

朝、駅を出てから会場までの道をすこし迷う。会場案内には「駅の東口を出て徒歩15分」としか書いてないから、とりあえず学生さん風なひとたちの後をつけていくことにしたが、だんだん学生さんたちも二手に分かれ、またさらに二手に別れ・・・とこちらもだんだん不安になる。いったん駅に戻ってタクシーに乗ろう方も考えたが、実はものすごく近いところにいたらくやしい・・・・と思っていると、なんだかこんもりとした森がビルの間からチラチラ見える。もしかして、と思ってそちらに歩いていると、やっと会場の方向を矢印で示す案内板をみつけた。危ない・・・。

発表は初日の、しかも午前中の部なので人もポツリポツリ。「まぁ、この程度の入りだったら、気楽かも」と思っていたら、自分の発表の時間になるとワラワラ人が入ってくる。9月の学会で会った人たちもチラホラいる。っていうか、司会の先生もやっぱり九月の学会でお世話になった方。指導教官の先生も一番後ろの席でまるで他人のような顔で座っている。部屋がもともと狭いこともあったけど、あっという間に満員。立ち見までいる。「ああ、そんな、立って聴くほどの話でもないんですけど・・・」と心中ハラハラしながら発表を始める。

緊張してすこし早口になってしまった。30分で終わるはずの話が25分弱で終わってしまった。

質疑応答。

妙な、意地悪な質問も出ることなく、内容に即した質問が4つほど出たように記憶している。うち一つは9月の発表を聞いた上での質問だったりした。
前日のシュミレーションの成果か、とにかく沈黙をつくることなく、ひたすら喋りつづけた。

質問の一つ一つはけっこう痛いところついてくるのだが、その痛みにとどまると、言葉も思考も止まってしまう気がして、とりあえずその痛みは「見ないこと」にした。無いわけではないが、あえて、見なかったことにして、質問の答えになっているかどうかわからないが、とにかく自分の言いたいことを言う。喋っているうちに「あ、質問とつながった」と思う瞬間があり、またベラベラとしゃべっている自分がテンションが上がってだんだん得意になってきているのがわかる。もちろん、微妙にポイントを外していたり、明らかに逃げの答えをした場面もあったが、とりあえず終了。9月の発表でいったん燃え尽きたあと、短い時間で用意した発表だったので、いくぶん文章も論点も甘かったかもしれないが、とりあえず乗り切った。

その後、同じ研究室の人の発表も無事終わって、その人と僕と先生の3人で昼食。先生も2人が無事に発表を終えてホッとしたようで、店に入ってすぐに生ビールを3杯注文。まだお昼だが、生ビールで乾杯。(先生はさらにそのあとレモン酎ハイを追加)

僕はまだ何となく胃が痛かったので、ひとまずはビール一杯で抑えた。

午後からは外国から来た研究者の特別講演。講演も質疑応答もすべて英語。でも、先生も僕も「こんなに飲んでそんな講演聴きいても絶対寝る」と思って、しばらく大学構内をブラブラして、グラウンドで練習する野球部を眺めながら自販機で買ったお茶を飲みながらダラダラ雑談。4時半ごろになって、先生が「一応、会場に入っとくか。その後すぐ懇親会だし」と言うので、一応、会場に入る。ちょうど休憩時間で途中から入るには絶好のタイミング。質疑応答では、ドイツ語のほうが話しやすいというのでドイツ語で質問している人がいた。

やっぱり寝た・・・。


懇親会では、ふだん東京在住の先生と話す。いつも学会で会うたびにコメントやアドヴァイスをくれる先生なのだが、今回はいつもより長く、いろいろな話をした。僕が去年も同じ学会で発表して、9月の発表、そして今回と、年3回学会発表しているものを知っているので、「ホッチキス君がずいぶん精力的に活動しているのをみると、やっぱり、もうそろそろ博論を意識してるんだろう?」と言ってくれたが、すみません・・・書く気はあるんですが、まだ何も形になっていません。

でも、今回の発表のことや、ふだん考えていること、これから考えようとしていること、自分の立ち居地における利点や不利な点など、いろいろと話す。ここで話したことが今後どうなるかということはわからないが、ふだんは会えない同じ分野の研究者の先輩と話すということが学会の醍醐味だったりする。


懇親会のあとは指導教官の先生に連れられて、何人かで夜の梅田にくりだす。まったく未知の街の、まったく未知の店に入って、串揚げとビール、焼酎を飲む。店の外観だけで先生が決めた店だったけど、大阪らしからぬ、ものすごく誠実な、美味しい店だった。串揚げも僕たちの飲むペースにあわせて揚げてくれて、すごく贅沢なお店だった。

焼酎がまわりはじめて、ああ、発表が終わった、とやっとのことで気持ちが緩んだ。