山口旅行一日目〜二日目

そして結局行ってしまったのだ山口旅行。

ウニャ子の体調は万全とはいえなかったが、「こういう場面でとりやめても、次の日にはもうピンピンしていて『だれが嘔吐下痢だって?』ってなるんだよね〜」と妻と話しつつ、とりあえず出かけてみて、だめだったら引き返そうということになった。

午前中に行き、嘔吐下痢確定後、点滴。午後から出発。この日はすっかり移動日。当初の予定では門司の鉄道博物館で遊ぶ予定だったが、出発後くれたので今回はパス。ひたすら九州道を北上し、中国自動車道をひた走る。

長門という町に入る。あちこちにセメント工場があり、道路沿いにはオレンジ色の瓦が目立つ大きな家がけっこうある。のどかの田舎という感じはない。すっかり工場化・近代化された山間の地域だ。夕暮れ時で暗かったからか、へんな圧迫感を感じた。

この日は湯本温泉の「湯本観光ホテル西京」に宿泊。大型ツアー客でもしっかり収容できる大きなホテル。まぁ、ふつうのホテルだ。

次の日はチェックアウト後、まずはホテルから車で5分の大寧寺へ。
桜が咲きはじめていて気持ちのいい境内。

ところどころ地蔵があると思ったが、みんな手に独鈷杵などの法具を持っている。そしてみんな番号が書いてあって、どうもこの地蔵たちが立ち並ぶこの小道を抜けるだけで48ヵ所詣でしたことになるらしい!
ひとりだけカクッとなっているところがいい。

うわ!寺と思ってたら神社にでた!しかも白いお稲荷さんはかなりでかい。

お社のすぐとなりに古い人形を供養するための小屋があったのだが、中を見るといろんな人形が納められていた。リラックマのぬいぐるみにまじってキリストやマリア像まで・・・。神仏習合ハンパねぇ・・・。

大寧寺の背後の山へ視線を移すと、思わず歩みが止まってしまう。先を急ぐ旅でないなら、しばらくそこにいたいと思うぐらいに、山から何か出ている気がした。

次は金子みすず記念館へ。記念館周辺は、たぶん詩の中に出てくる角の店なのだろうか、あちこちにこういう石碑や金子みすずの詩が書かれている。

当時の書籍・文房具店を再現した記念館。

それにしても、すごい人だった。そんなに人気なのか〜と思っていたら、最近ACのCMの「遊ぼうっていった遊ぼうって言う」で思いがけずブレイクしたらしく、多くの人がその「遊ぼうっていったら〜」系の絵葉書を買ったり、視聴覚コーナーでその詩の朗読を聴いていた。なんか・・・別にいいんだけど、そこまで共感するものかな〜と、ちょっと引いた。
彼女の感性とか、詩の価値とか、意義とかは、僕のような素人がどうこう言おうが、並外れてすばらしいものがあるのだと思う。でも、これは僕の個人的な印象に過ぎないのだが、その無垢さ、イノセンスについては、ちょっと恐ろしいというか、背筋が寒くなる思いがした。暴力とギリギリとなりあわせの、なんとか思いとどまっているイノセンス。作意のない、無防備なまでのイノセンス。そんなことを考えていて気が重くなってしまった僕の傍らを年配の女性グループが「ほんとうにいいわね」「心が表われるわ」と口々にいいながら通り過ぎていく。
グッズコーナーには彼女の詩集にまじって、教師向けであろうか「道徳の教材としての金子みすず」とかなんとかいう本があった。
なんだかいやな気分になった。みずからの暴力性に無自覚なイノセンスというものは、じつはけっこう暴力的なのではないだろうか?
旅先でそんなこと考えてもせん無きことではあるのだが。(つづく)