この数日間、妻が出張で不在だったため、子どもたちは「父と暮らして」状態。平日の昼間は保育園があるからいいが、土日は朝から食事の準備のことばかり考えてしまう。朝食が終わって片づけしているあいだにもう昼食のことを考えて、戸棚や冷蔵庫と相談。時には買い物へ行く。

そんな妻不在の日々が終わりかけたとき、とてつもないミスを犯す。

夕飯が終わって洗い物をしていると、長女ウニャ子が台所に来て「おかね食べた」と言う。

おかね?お金?

ふっと頭の中を何かがよぎって、机の上を見ると、電池交換のために裏ブタを開けた腕時計の横においてあったボタン電池がない。お金?電池?

もしかしたら電池は床のどこかに転がっていて、さっき聞いた「おかねたべた」は「おかしたべた」を聞き間違えたのかもしれない。でもこの胸騒ぎはなんだろう。

かかりつけの病院に電話し、もしかしたら子どもが電池を飲み込んだかもしれないと話すと、大きな病院にいったほうがいいというので町立病院へ。

レントゲンを撮ると、そこにはあまりにはっきりと小さく丸い影が・・・。レントゲン技師の人もおもわず「ああ・・・写ってますね・・・」と一言。

電池を飲み込んだケースの中でも、使用済みの電池の場合は比較的危険度は低いらしい。とはいえもちろん「比較的」というだけであって、異物誤飲であることには違いはない。もしこれがまだ十分使える電池だった場合は、胃の中で放電して胃に穴が開くことあるらしい。

とにかく町立病院では設備上、胃の中の電池をとることはできないので、紹介状をもらってその足で山を降りて市内の大きい病院へ。車中、子どもたち二人はすっかり寝てしまっていた。

救急窓口で受付し、もう一度レントゲンを撮る。胃を過ぎればあとは便と一緒に出てくるのケースというのがほとんどらしいのだが、問題はまだ胃の中にありそうだということ。胃の中にあるというのが大問題なのだ。

夜中の11時頃、連絡した妻と病院で合流。そんな時間帯でも救急のロビーは小さい子どもを連れた家族連れや、その他たくさんの人がいた。世の中、たくさんの子達が夜中に熱をだしているのだなと思った。

そして、妻に抱かれたウニャ子が診察室へ。僕は寝てしまった長男坊と待合のロビーで待つ。


そしてしばらくすると、ウニャ子を抱えた妻が戻ってきた。手のひらには直径1センチ未満の例のボタン電池。先に磁石が付いている内視鏡のようなものを入れて取り出したらしい。(親は処置室には入れなかったのでその現場自体を見たわけではないが、お医者の説明ではそのような処置だということだ。)

しばらくショックでぼう然としていたウニャ子だったが、しだいに機嫌も直ってくる。電池自体が酸化しておらず、飲み込んだのが食事直後でほかの内容物もあり、胃の壁に直接触れていなかったこともラッキーだったようだ。しかし、念のため月曜日に外来で再受診して欲しいとのこと。

すでに日付も変わったころに病院を後にする。この日はそのまま近くのビジネスホテルに家族で泊まる。
病院へ向かう車中でしっかり睡眠をとった子どもたちは急なホテル外泊でテンション・アップ・・・。

よくそういう事例を雑誌や本で読んで、「子どもがボタン電池を誤飲って、どんだけバカな親だろ」なんて思っていた。

しかし、そう、そのバカ親は僕だった。

よくよく考えてみれば、小さい子(2歳9ヶ月)がいる状態で、作業机の上にボタン電池を出して置いておくなんて、あまりにも危険すぎだ。そんなこともわからなくなっていたこと自体が恐ろしい。子どもは常に親の想定を斜め上に突き進むということを改めて確認させられた。